家の記憶

最近CMで見かける 「家をリセットしませんか?」
どれほどの人が共感しているのでしょうか?
「私もしたいわ」と思いながらこのブログを呼んでいる人がいたらショックだなぁ。
ツイッターでつぶやいたら、「家をリセットしたって、住んでいる人が替わらない限り、何も変わりませんよ」とか「ゲーム世代への訴求効果を狙った売らんがためのなりふり構わない宣伝でしょう」というつぶやき返しを頂いたのでまずは一安心しました。
 
10年ほど前に「家の記憶」という建築と絵画2人展を行ったことがあります。
私の事務所で設計を請け負う際、建替えのときには友人の画家に建替える前の絵を描いてもらい、新しい家が出来たらその絵を一番良い場所に飾らせて頂いています。
新しい家には設計段階で絵を飾る場所もしっかりと考えており、入居の際には画家と二人でうやうやしく絵を掛けるというのが私達の儀式なのです。
そうして溜まった絵と家のコンセプトパネルを一同に展示したのですが、見ていただいた方にはご好評頂きました。
 
家を新しくするときには希望がいっぱい。
現在住んでいる家の不満しか出てきません。
でも重機が入ってそれを解体するときにはなんとも寂しげな顔をする。
きっとその古い家で過ごした記憶が走馬灯のように思い出される瞬間なのでしょうね。
描いてもらう絵は油絵。
あの絵の具を塗りこむ作業に記憶を塗りこむということを重ね合わせます。
 
人は記憶の継承により生きているのです。
認知症の人はその記憶がなくなってしまうことに最大の恐怖を感じます。
家もまた同じ事。
今まで過ごした人生の記憶なのです。
油絵にはそうした家の記憶が塗りこめられ、新しい家に飾る事でその記憶が継承されていく。
私はリセットではなく、そういう家の記憶を大切にした設計をやっていきたいと思います。
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