デマンズとニーズ 利用者側にも教育の必要が

福祉住環境整備でいつも問題になるのがデマンズ(要求)とニーズ(必要なこと)の混同です。
ケアマネージャーが対象となる家族の要求をそのままニーズとして捉えてしまい、本来行わなければならない必要な事の抽出が行われません。
結果としてトイレは新しくなったけど、そこまでたどり着く事ができない、またはたどり着くまでの過程で転倒リスクがある状況のまま放置されるといった状況があまりに多く見受けられます。
県のケアマネージャー向け研修会で私がポイントとするのはほぼこの一点。
ここがきちんと整理できないといつまでも各論(個々の場面での技術論)へは入っていけないのです。
でも各論を教えろとだけ大抵の受講者は要求してきますね。
 
私と一緒に住宅改修を行うケアマネージャーさんには当然ニーズの抽出に必要な平面情報を私の方で作成し、一緒に対象者の動線を書き込み、その主要な動線上のリスクを抽出するといった作業を行っています。
先回もそうやって出来上がった提案書ですが、結局トイレの便器を和式から洋式に変更するという一点のみしか採用されませんでした。
この場合はケアマネージャーもしっかり現状に対するリスクの認識が行われ、トイレへ安全に行き、きちんと用をたすために何がニーズなのかを抽出できていたのですが、当事者にその理解を十分してもらえなかったのです。
もちろんサービスの選択は本人とその家族にありますから、私達は情報提供に努めるのみ。
措置的なことは行えません。
「今はまだ十分歩けるから...」とは多くの人が言う事ですが、十分歩けるからこそ、無意識の段差に躓き転倒、そして骨折長期臥床という道を歩むのもこれまた典型的な高齢者の寝たきりへの道でもあります。
パワーリハで転倒しても大丈夫な柔軟な身体を作ることももちろん重要ではありますが、せっかく要支援から利用できる住宅改修です。
まだまだ元気なうちに利用して欲しい。
 
住環境整備の意味を専門家だけではなくもっと多くの人に知ってもらう事は出来ないものでしょうか?
それも出来たら若いうちに。
日本の教育に足りないものは多くありますが、「住む」という視点も足りてないなぁ。
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