一級建築士ってなんだ?

昨晩は日建学院の一級建築士設計製図試験対策講義で教壇にたった。
まもなく今年の設計課題が発表になる。
先立って2級の設計課題が発表されたが、今年は2級建築士試験始まって以来のRC公共建築となった。
計画規模こそ2級建築士の範疇だが、この手の設計課題はいままでは1級建築士に課せられるものであった。今まで木造軸組みによる住宅の設計を勉強してきた受験生にとっては頭がいたい課題である。(まあ、考え方を割り切れば、木造軸組みよりRCの方が簡単ではあるのだが)
姉歯元建築士による耐震強度偽装問題発覚以降、1級建築士の在り方が問われている。
今後、現在の1級建築士に対しても再試験を課し、その成績如何によっては2級に降格という話も出ている。また新たに1級建築士を目指すものに対してはインターン制度を設け、一定の見習い期間とするという話もある。現行1級建築士に対し、構造試験を新たに創設し、その試験に合格した建築士だけが大規模建築の監理が行えるという、特級建築士とも呼べる上位資格と作るという話も。
いずれにせよ、相変わらず役人の考えるのは対処療法だ。
一級建築士に対して何を求めているのかが不透明である。
姉歯問題は建築士の知識の問題ではなく、姉歯元建築士自身の資質の問題だ。
いくら上位資格を与えようとも不正は幾らでもできるのだ。
また、構造さえがっちりしていれば良い建築というのも短絡的である。
いろんな知識やノウハウをもつ現役一級建築士を、建築の一部分である構造のみで二級に降格させる社会的損失も大きい。
建築士に対してさまざまな足かせを強いる役人はなぜ違法を見抜けなかった建築主事資格の見直しを行わないのだろう?
法の番人としての自らの資格に手をつけず、いたずらに建築士のみ足かせをする今回の改革案はどうも賛成しかねる。
建築士制度そのものに反対し、制度設立時に資格をあげるというのに敢えて断り、建築家という名で活躍する巨匠たちがいかに正しかったか、今更ながら頭が下がる。
幾ら法で縛りつけようとも、素晴らしい建築はそんなこととは関係なく生まれ、また悪しき建築もその法の網の中で相変わらず生まれてくるのだろう。
とりあえず、現行試験制度の最後となる今年の受験生は絶対今年合格するという覚悟で戦わないと、一級建築士の称号はずいぶん遠くに行ってしまうだろう。
まあ、一級建築士になってもその後、ふるいにかけられ二級に降格するかもしれないが...
カテゴリー: 建築, 建築士フォーラム パーマリンク

コメントを残す