心は言葉から生まれる

先週の土曜日、夏樹の通う「きらきら保育園」で父母に向けた講演会が行われた。
講演頂いたのは土屋秀宇(つちやひでを)先生、日本漢字教育振興協会理事長だ。
「きらきら保育園」では幼児に漢字教育を実践している。
そんな小さなうちから漢字なんてと言う人も居るが、この講演を聴いたら納得するだろう。
ひさびさに聴き応えのある講演内容だった。
日本の国語教育のひどさはなんとなく感じてはいたが、その影響力がこんなにあるとはと実感させられるものであった。
現在、小学校の乱れが問題になっている。
まともに机に座っていられず、授業中でも勝手に歩き出すため授業が進められないのだという。
いわゆるADHD(多動性注意集中困難症候群)である。
また、感情を表面に出すことが出来ないサイレントチャイルド、高機能自閉症の子供も増えている。
その背景には幼児期における幼児と親や周りの大人の語りかけが重大な関わりを持っているのだと言う。
人間の思考には0歳から9歳までの子供脳とそれ以降の大人脳に大きく分けられるのだそうだ。
子供脳は貪欲なまでの知識欲を持ち、なんでも吸収したがり、大人脳になると面倒くさいと言う思考が生まれる。
だから小学校3年生までにいろいろな体験をさせることがその後の学習能力に差をつけることになる。
ところが日本の教育はどんどん子供の学習量を減らし続け、そうして育った子供が親になると言う第二世代になっているため、必要とされる幼児教育が成されないまま前述のような小学生を生み出しているのだ。これはまさに悪の連鎖であり、国の存亡にも関わる問題だ。
で、幼児に漢字を教えるということだが、
「くるまで5分」と書いてあったらどう判断するか?
私は「車で5分」と解釈し、隣のお母さんは「来るまで5分」と解釈した。
つまり「くるまで」というひらがなには「車で」と「来るまで」の二つの漢字が当てはめられ、前後の文脈が無いと自分の常識のより強いほうで勝手に解釈する訳だ。
漢字はむずかしく、ひらがなは簡単であると思いがちだが、実はひらがなだけで文章を読解するほうが難しい。
実際に子供に与えられているひらがなだけの教材を読んでみると実感できる。
幼児は幼いから「ひらがな」からというのは大人脳の発想なのである。
むしろ漢字を与えたほうが、漢字自身が言葉になっているので語彙は増えていく。
そして子供脳はそれを嫌がることは無い。
確かに保育園の指導で子供の名前は漢字で書いているが、夏樹は問題なくそれを自分の名前と認識している。
語彙が増えると言うことはそれ自身がひとつの意味を持つ言葉だから、言い返せば知識が増えると言うことでもある。
人間は言葉を理解するときに目と耳を使う。
これも重要なことだそうだ。
TVやゲームといった一方通行の媒体では、驚きや感動が一見あるように思えるが、実は脳細胞があまり働いていない。いわゆるゲーム脳である。
しかし、文字だけを追う読書はいろいろと頭でその情景を考えるし、言葉のやり取りはお互いの顔色を伺うので脳全体が活発に動く。
だから親子の会話やこうした漢字教育の実践は子供たちの幼児期の心の栄養になり、やがて大人脳になったときに花開くのだそうだ。
TVを見ながら授乳する母親、「ダメ」「早くしなさい」を連発したり、TVやゲームを子守代わりにする親はそうしたやらねばならない親子の対話をしていないのだ。
最近、「ダメ」を連発するわが子を見て、自分がそうした言葉(先生はそれらを殺語と呼んだ)を言っているのだと反省した。
子供にはあまり否定的にならない言葉をかけてやらなければならない。
良いことをしたらしっかり「頑張ったね」(殺語の反対で愛語と呼ぶのだそうだ)と声をかけてやる。
「やさしい言葉をかけられた子供にはやさしい心を持った子供が育ち、悪い言葉を言われ続けた子供は悪い心が育ちます。」
先生いわく、言葉が人格を造るのだそうだ。
また日本語が日本人を造るともおっしゃった。
日本語で育った人間は種は関係なく日本人としての思考を持つ日本人になる。
青い目を持って生まれても、日本の中で日本語で育てば生粋の日本人に育つ。
それほど言葉というのは影響力を持つものなのだ。
それなのに現代の日本語教育は問題だらけだ。
戦後、GHQにより漢字を捨ててローマ字だけにするよう指導が出された。
当時の文部省はそれを受け入れ、それでもいきなりというわけにはいかないので当面運用する漢字1850字のみを残しすべて捨ててしまった。
それが当用漢字である。
また溶岩と言う字の溶は「さんずい」を使っているが本来「さんずい」は水を表す。
だから水で溶けるもの以外おかしい。
岩が溶けるのは火の力だから正しくは熔岩と書かなければならないのだが、「熔」が当用漢字から外れてしまったため、当て字にしなければならなかった。
これを代用漢字という。
これでは漢字の持つ言葉の意味を正しく伝えることが出来ない。
ふり仮名も問題で、地球は「地」という漢字を「ち」と書くのに地震は「じ」を書かなければ正解とならない。
これはローマ字による読みに統一してしまったためで、本来の意味が伝わっていない。
こんな風に現代の日本語教育では正しく日本語を伝えることは難しく、つまりは正しい日本人としての教育は出来ないと言うことなのだ。
こんな誤った教育を是正しないといつまでたっても安倍総理の言う「うつくしい日本」など実現できないだろう。
1時間半にわたる講演内容は聞き応え十分だった。
こんなにすばらしい話を「きらきら保育園」に通う子供たちの父母の一部しか聴けないのは残念である。
先生は日本テレビの「世界一受けたい授業」に来週出演されるのでぜひ興味を持った方はご覧ください。
こういう先生が身近にいっぱいいると良いと思う。
それにしてもこの講演を書き留めている父兄が少なかったのは残念だ。
私はメモのほかにレコーダーにも取って聴きなおしました。
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