疑似体験

昨日、クライアント夫婦と住宅の基本プランについて最終調整を行った。
「自給自足の家」だ。
クライアントとの打ち合わせはもう3ヶ月、ほぼ毎週行っているが、最初の2週間はプランの提示はしないでフリートークのみだった。
クライアントの家族やその生活を私が理解する必要があったし、クライアントが抱く住宅像を漠然としたものではなくクリアにしていく作業が重要だからだ。
教え子が「どうもお客さんにしっくり理解してもらえない。」といってパースを作ったり模型をつくっていると相談を受けたが、おそらくその前の段階が十分時間を費やされていないのだろう。
今月に入っていままで話し合った家を具現化したプランを提示した。
提示したプランは2ヶ月の話し合いの中で私自身頭に作り上げたものだ。
クライアントの希望と私の提案は大きなずれは無かったが、将来的にエレベーターの設置想定が望ましいという話になり、昨日は手直しした第2案を提出する。
たった2案でクライアントから基本プランの承認を貰い、これから実施設計に入る。
 
昨日の話し合いの中で、第1案を実家の親に見せたのだが全然イメージがわかないと言われたそうだ。
それはそうだ。いわゆるnLDKといったハウスメーカーのカタログやちらしに入っている間取りとは次元が違う。
しかし、クライアント夫婦には私のプランは自然に頭に入ったそうだ。
最初の2ヶ月の話し合いは本当に重要だ。
昨日渡した第2案を持ち帰り、その図面の中に自分のこれからの生活を疑似体験してくださいと送り出した。
こらから構築する家が夢の中に出てくるくらいでちょうど良い。
キッチンセットはどれにしますか?壁紙は?といった一般的な施主のかかわりとは違う、設計そのものに関わる今の時間がとても楽しいと言う。
建築家冥利に尽きる話だ。
私たちはそうしたクライアントの思い描くライフスタイルを具現化する手伝いをするだけなのだから。
設計業務はコンサルティング業務なのだ。
自分のプランが理解してもらえないということはきちんとコンサルティングしていないということだ。
設計者の想いを強いると、それは設計者の家でクライアントの家ではなくなる。
そこにクライアントは生活を疑似体験することも出来ず、なんとなくすれ違ってくる訳だ。
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