なぜ「イギリスの家は古くて豊かで日本の家は便利で貧しい」のか?

月曜日に続いて火曜日も会議の後にシンポジウムに参加しました。
今日のシンポジウムはUIA東京大会に向けたもので、その第2回目となる。
テーマは「建築家は市民の期待に応えているか」。
その基調講演の演題が「なぜ「イギリスの家は古くて豊かで日本の家は便利で貧しい」のか?」でした。
講師は作家であり、月間情報誌ミスタ・パートナー編集長であり、ラジオパーソナリティーでもある 井形慶子氏。
 
年に5回以上は行くイギリスでいつも不思議に思っていたことがあったそうです。
それは不動産のチラシ。
日本の不動産のチラシにはまず土地と建物の平面図、面積が目に入ると思うが、イギリスにはそれが無い。
イギリスの一般的な不動産チラシには家の外観写真と何調のデザインで築どれくらい経っていて環境はどうかということ。
しかも築何年というのが価値として示されているのがまったく日本とは逆。
広さや数値ではなく、家の個性や環境を買うのが不動産であるという認識がそこにあるのだということです。
そして手を加えればそれだけ資産価値が上がるのだから、住み手もメンテナンスを怠らず、買値よりも高く売ることを目指します。
日本ではいかに環境や立地条件が良くても中古住宅は減価償却するだけで、それ自体の価値は決して上がる事はありません。
 
おりしも前の晩に既存建物のストックについて議論してきただけに、この話のつながりは興味深いです。
井形氏は日本だって不動産価値は高める事ができると奮起し、500万の中古マンションを購入、500万かけてリフォームしました。
そのときの様子を書き記した「老朽マンションの奇跡(新潮社)」は大反響を呼んだそうです。
建築不況真っ只中の日本ですが、リノベーションをしようと思えばストックだらけの国なのです。
ただ、この講演では前日ほど突っ込んだ内容ではなかった。
というのも今日面的なリフォームにしか話が言及されていなかったから。
イギリスでは前日の話では調査員(サーベイヤー)が入りますから、きちんと建築として成り立っているかを公的に調査し、その結果を踏まえて不動産市場に流れます。
ところが、日本ではそれが未整備の為、きれいに手直しする一般的なリフォームに留まり、残念ながら構造やバリアフリーにまで再構築はされません。
やはりここで建築家というスキルが必要なのかなと改めて思いましたね。
ただ、その建築家という称号ですが、これもまた日本国内ではまったく未整備の分野です。
これが後半のパネルディスカッションへと繋がっていくのでした。
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