建物は建つべきところにしか建ちません。-建築士フォーラム

今年から始めた「建築士フォーラム」。
遠方から通ってくれる受講者と毎週マンツーマンの授業を行っています。
一番最初に教えたのは課題文の読み方です。
課題文にはまず設計すべき建物の趣旨説明がなされ、当該建物の利用者は誰であるかを明確に読み取らなければなりません。
(例えば近隣に住む地域住民が利用するとあれば、近隣の人は歩いて来ますから、当然歩道がある道路側からのアクセスとなるとか...)
次に敷地条件。
趣旨説明と合わせて、どちらに建物の正面を持ってきて、どこから管理部門の通用口を設けるか、また住居地域系であるならば高さ制限はどのようになっているかといった具合にチェックします。
続いて課題文は建物の概要について説明が続きます。
受験者の多くはそのまま順番に読み続けますが、これが実は大きな落とし穴。
構造・階数の指定や床面積の合計までは敷地条件と合わせて読む必要がありますので、チェックしますが、そのあとに続く要求室は読んではいけない。
受験者のもっとも気になるのが、いったいどんな部屋を要求されるのだろうという部分ですから、おそらく大方の人がここの読み込みに一番時間をかけるのでしょう。
しかし、ここで得る情報が実は大枠を誤る最も大きな引き金になるのです。
建築の設計と言うのはいきなり内部を詰めてはダメなんです。
それは試験対策だけではなく実務でも一緒。
まず最初に外観のイメージを固めなければダメ。
ですから、私の講義ではここを読み飛ばし、次のその他の施設を先に読むように始動します。
その他の施設というのは当該建物に附属する施設で、それは駐車場であったり、喫茶室のテラス、イベント広場だったりします。
建物は敷地の建つべき所にしか建ちません。
まず敷地をどういう風に利用し、建物を配置するのかを先に決めなければ設計など進むわけが無い。
大まかな構造(スパン)計画と外観のイメージを想定してから、その内部に要求される居室を配置するというのがエスキス(計画)の基本なんです。

なかなか文章で書いても判ってもらえないし、大教室で不特定に語っても理解の程度が読めない。
今回はマンツーマンですから、「目からうろこ」といううれしい感想をもらっていますけどね。

住宅の設計で考えてみると判りやすい。
能力の無い設計者って、いきなり間取りの組み立てを始めるのでは無いでしょうか?
そして、その出来上がった間取りのままに外壁が建ち、屋根がかかる。
つまりまったく外観のデザインはされておらず、結果としての形があるのみ。
そんな手法を設計と当事務所では言いませんが、世間では一般的に行われていませんか?

二級建築士設計製図試験まであと12日。
一級建築士設計製図試験まであと40日。
エスキスが上手くまとまらない人は建築士フォーラム

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