言ってみれば西洋医学と東洋医学の違いでしょうか

昨日、新潟ユニゾンプラザにて新潟県住宅改修・福祉用具広域支援事業者協議会が行われました。
平成22年度最後の会議となります。
この会議には立ち上げ当初から関わってきましたが、同じく10年間関わってきた建築系福祉ボランティアを退会したことで、引責ということでしょうか、事実上の更迭を受け、年度途中ということもあり、今年度は名前だけの副委員長でした。

一昨年までは作業療法士会現会長の横田氏が福祉用具、私が住宅改修の講義を年3回ほど受け持ち、県内のケアマネージャーに環境整備の重要性を説き、その援助として県内の各専門職に登録をお願いし、相談業務を行ってきました。
ところが昨年はいろいろあり、新しい資料も用意していたのですが、私は講師を下ろされ、横田氏に全ての講義をお願いするという事態になってしまい、ご迷惑をおかけいたしました。

横田氏と私のチームで行った住宅改修は県のユニバーサル住宅設計競技でも優秀賞を頂いております。
福祉用具と住宅改修が共に車の両輪であることはお互いにキチンと認識出来ていますから、彼の講義だけでも福祉住環境整備はきちんと伝えられているのだろうと思います。

事業も10年以上続き、そろそろ見直しの時期にきているという事務局からの説明からも来年度からの事業は人数を少数に絞った上で行われる様子です。
相談実績も私が参加していた時の18件から5件に激減し、これでは事業そのものの存在する意味もありません。
いわゆる臨床件数が少ない病院のレベルを考えれば、相談件数が少ない本事業がどのレベルを維持しているのか不安になります。
また、臨床データの共有と検証がなされなければ、相談者をどうやって保護するのだろうと危惧します。
事業を継続することが目的化し、事業の意味が薄らいでいくようならそろそろ潮時なのかもしれません。

さて、高齢社会を乗り切るためには人的な介護力だけでは少子化の現状から行き詰まることは必須でしょう。
住環境整備こそがそれを打開する役目であると伝え実践するために建築系福祉ボランティアを発足させました。
住環境整備には福祉用具の活用と住宅改修がバランスよく連動することで大きな成果をもたらします。
福祉用具の選定も住宅改修も導入の仕方(ニーズの捉え方)はほぼ一緒。
それが横田氏一人による講義でも大丈夫であろうという理由です。

しかし福祉用具と住宅改修は似ているようでちょっと違う。
これが理解できない人が増えることが目下の私の不安です。
言ってみれば西洋医学と東洋医学の違いでしょうか?
現代社会は基本的に西洋医学が主流です。
西洋医学は対処療法で発達を遂げた医術。
病気になったから、悪いところを除去しよう。痛みを取ろう。
急性期にはとても効果的です。
しかしながら、どんなに医学が発達しても最終的には人間が本来持つ自然治癒力に頼らざるをえません。
風邪をひいても、西洋医学で熱を下げることはできますが、結局は自分自身がウィルスと闘い、抗体をつくることでしか良くはならない。
一方、東洋医学では未病(みびょう)という言葉があります。
前漢時代に編集された「黄帝内経」という中国最古の医学書に書かれている一節「聖人は既病を治すのではなく、未病を治す」。
既病とは既に発症している病気ですが、病気になる前に体内にはその原因となる病原菌はすでにおり、まだそれが症状として現れていない状態を未病としています。
病気というそんな大事になる前に手を尽くせと説いているのです。

私の講義の中でよく言うのが「年寄りを見つけたら作文してでも要支援にしろ!」。
要介護では対処療法しか残っていません。
でも要支援になれば住宅改修を介護保険で行なうことが出来ます。
福祉住環境整備で最も重大なテーマは転倒させないこと。
高齢者の殆どが転倒から廃用症候群へのスパイラルへ陥ります。
骨折してから車椅子や歩行器は大変有効な補助となりますが、その前に転倒防止策をというのが未病を治せという考え方なのです。
同じ高齢者支援でも微妙にそのアプローチは違います。
福祉用具の選定はそれが必要になってから初めて行います。
しかし建築はそれが必要とならないようにを本来目指さなければならない。
建築基準法の第1条に「国民の福祉に寄与する」と謳われている通りです。

来年私はこの事業に参加することは無いと思いますが、福祉用具と住宅改修、その微妙な違いは今後も伝えて頂けることを願うばかりです。

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