暑さ寒さの質(室内気候のデザイン)

宿谷先生のエネルギーの話はとても面白かった。
私たちはエネルギーを作り出しているような錯覚に陥りがちだが、実はエネルギーとはどこまでいっても自然の事象に過ぎない。エクセルギーといった自然のもつポテンシャルを加工し、利用し、結果的にエントロピーとして放出する過程で関わっているだけなのだ。
私たち人間は自然の創造物である。
そして私たちを取り巻く環境はまた地球環境から宇宙まで自然である。
私たちと自然の間にあるもの。
まず最初に衣服がある。そして住宅環境、都市環境と続く。
私たちは私たちと自然の間にこうした人工物を挟むことで生存環境を創ってきた。
 
また私たちはとても優秀な発熱体でもある。
私たちは食べ物を体内で燃焼し、熱を作り出している。
私たちが1日に必要とする栄養カロリーは2000~2500キロカロリーと言われるが、これが生み出す熱エネルギーは100ワットの電球くらいである。
質量対比で言うと実は太陽の1万倍もの発熱量を持っているのだそうだ。
こうして作られたエネルギーを放出することで36~37度の体温を保っている。
放出するエネルギー量が多いと寒く感じ、少ないと暑く感じる。
暑いときは発汗する事で気化熱により体温を下げるのだ。
 
ところで私たちが体感する温度はさまざまな要素から成り立っている。
それは気温だけではなく着衣量や風速、輻射熱といったものだ。
現代人はエアコンを使い気温(室温)だけで体感温度を上げようとするが、エアコンの無い時代はあたりまえのように服を多く着たり、冬の日差しを建物の奥に入れたり、炎の遠赤外線も利用した。
私たちが体温を保つ(快適に過ごす)ために消費するエネルギーを人体のエクセルギー消費といい、この消費量が少ないほどエントロピーの放出を少なく出来る(つまり省エネ)。
室内空気温と壁面表面温度(輻射)の組み合わせでエキセルギー消費量は変化するが、もっとも消費量が少なくなるのが空気温18度・壁面表面温度25度付近であるとのことだ。
 
自然物である人間と自然環境との間に私たちは人工物を挟むことで快適な環境を創っているが、その人工物がこうした環境を創ることが出来れば快適であるということになる。
室温を18度程度の低めに、壁からの輻射を高めにするのは私たちがベストバランス研究会で10年以上実践してきた住宅性能そのものではないか。
室内気候のデザインはやはり重要なのだ。
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