個別性能評価から総合環境性能評価へ

ここ20年くらい、日本の建築は省エネ性能を追及してきた。
最初の頃は馬鹿にしていた連中も、今では自分たちは最初からやっていたような顔をして省エネを口にする。
日本で最初の気密基準は5c㎡/㎡(相当隙間面積C値:建物の延べ床あたりに対する隙間の大きさ)であった。この性能はとても気密と呼べるものではなかったが、当時のハウスメーカーはこれを超えることが出来ず、圧力をかけてこの数値に収まった。(これでも工場生産のハウスメーカーでは限界だった)
平成11年次世代省エネ基準ではようやく気密性能を達成できたハウスメーカーが今度はこれをキャッチコピーにすべく基準を2c㎡/㎡にアップ(ⅠⅡ地区)し、差別化を図った。
建物は閉じていれば良いということではないが、閉じるという性能が無ければ換気という概念を持ってくることは出来ない。穴の開いたストローで水が吸えないのと一緒で、気密性能が悪ければ換気計画などは無意味になってしまう。そのボーダーはやはり1c㎡/㎡ぐらいと私は認識するが、ようやく現実的なレベルに達したと言っても良いだろう。(反対に0.1c㎡/㎡などという数値を言っている業者も居るようだが、実際にはそこまでの数値は計測不可能だし、そこまでにする費用対効果も少ない)
また気密測定だけではなく熱損失係数(Q値)も重要な性能だが、こちらも地域の特性を無視した異常なまでの高断熱化を図るメーカーやフランチャイズに踊らされた工務店が多い。必要性能以上の断熱の費用を負担するのは消費者であることを考えると、性能値ばかりを差別化と称してうたい文句にしている現在の建築業者には疑問が多い。
まあ、彼らに言わせると高性能は顧客のニーズだということになるのだろう。
 
いかに性能オリンピックを繰り広げて超高性能な建物を作っても野原の一軒家でないかぎり、本来の性能を享受する事は難しい。また、高性能な建物でも周辺へはCo2やら廃熱を撒き散らしているのだ。
 
そこで現在進められているのが建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)である。
ここで評価されるのは「建築物の環境品質・性能(Q)」と「建築物の外部環境負荷(L)」の二つの性能だ。
そして面白いのは新築時だけではなく、築1年後の運用実績を評価したり改修時にも評価するというところ。その建物の資産価値にも活用できるという現実路線を模索しているところである。
将来的に周りの環境を害する建物には環境税を課税するくらいのところまで行ってほしい。
ランクは「Sランク(素晴らしい)」から{Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B‐ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」の5段階評価。
ただし、どこまで行ってもSランクの建物をCランクの建物が取り囲んだらSランクの建物の生活環境も悪くなる。全ての建物がSランクを目指さないと良い環境は生まれないわけだ。
今年はいよいよ住宅版のCASBEEが出来るんだそうだ。
 
きちんと性能を楽しめるデザインの建物が増えたら良いと願う。
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