昨日、県庁の高齢福祉保健課を訪ねた。
11月に行われる講演会の打合せのためだ。
毎年、県社協が行う介護支援事業者向けセミナーで住宅改修を担当しているのだが、今年の介護保険法改正でいろいろ調整しなければならないところが出てきたのだ。
住宅改修は福祉用具と違い、カタログから選んで終わりという事にはならない。
物件に応じて様々な知恵を使わないとうまくいかない。
また、歩行が不安定な人には手がかりとしての手摺が必要だが、家中手摺だらけにするわけにも行かないし、廊下そのものもそんなに広くは無い。
だから既存の家具を固定する事で手摺化したり、柱にテニスラケットのグリップを巻きつけて滑らないようにして手摺の代用とするといったテクニックを使ってきた。
それらは既製の手摺を使うより安価で十分その用を果たすものだ。
今まで、それらを介護保険の住宅改修項目 手摺等の設置として申請をしてきた。
当然、そうしたテクニックをセミナーで伝授する訳だが、介護保険が改正され事前申請になってから窓口ではねられるケースが多くなった。
事前申請制度そのものは良い事だとおもう。
そうなる前から私たちは自主的に行政窓口とこれから行う住宅改修について事前相談を行ってきた。
しかし、全ての案件が事前審査となったら行政窓口の負担が大きくなってしまった。
また、大抵の場合、窓口にいる職員が介護系の専門職というわけではなくたまたま配置されただけの素人だ。
そんな窓口が個々の案件を判断しなければならないということになり、責任が大きくなった。
数を裁くためにはとにかく決められた書類があれば良しというペーパー主義的な処理となり、自分で責任を持ちたくないから手摺等の「等」といったテクニックを認めず手摺という商品のみが認められる。
改正介護保険の重要なポイントは適正な住宅改修費の支出の確認だ。
そのための事前審査なのだが、現状では被保険者が多分使えないであろうが家族は喜ぶ和式からシャワー付洋式トイレの変更は認められ、なるべく金をかけずに安全な住宅にしようという私たちのテクニックが跳ねられるという異常な事態になってしまっている。
これではセミナーで話しても、結局行政窓口で撥ねられてしまう。
それでは意味が無いので県から市町村窓口に本質を忘れないように指導してほしいと頼んだわけだ。
2時間以上話した。
私の意見はまったくその通りであると言ってくれたが、あくまでも県としては市町村に判断して欲しいとは言えても、その判断をどのようにするのかを言う権限はないのだと言われた。それこそどのように判断するかは市町村の裁量なのだという。
もし、私たちの工夫を認める市町村があるとすればそれを県が否定することは無いのだ。
ただ、市町村が撥ねたものを県が了承するということは出来ない行政システムなのだそうだ。
もしそうしたいのなら、立案者である国に働きかけなければならないらしいが、国がいちいち「等」の個々の物件を判断するというのはそれこそ現実離れしている。
「等」というのはあやふやだ。
だからこそ有効に運用するように一番利用者に近い市町村を保険主体とし、判断を委ねているはずだ。
そこに責任を取りたくない事なかれ主義の行政職員が座ると、判断するという職務を放棄し、県に問い合わせる。
県はあくまでも市町村で判断してくださいとしか言えない。
責任を取りたくないから「手摺」という商品のみを認め「等」は拒絶する。
これが改正後の介護保険による住宅改修の実態である。
「等」を認めたら何でも認めなければならなくなるというが、それらの本質をきちんと判断するために事前チェックするのではないのか?
目的を達成するための手法は様々だ。
ただ、段差の解消、手摺の設置、床材の変更、扉の変更、便器の変更といった定められた項目についてはその目的を達成するためのものは認められて良いはずだ。そうした工夫がいかに確かなものであるかを作業療法士や介護専門職が理由書としてあげているのだから。
商品だけピックアップすれば良いのであれば、「等」などという曖昧な記述は削除し、住宅改修に適合した商品を認定すればよいだろう。
また天下り先が増えて喜ぶ役人が多いのではないか。
行政職員も呼んで研修をしようという私たちの計画は暗礁に乗り上げた。
とりあえず解ったのは、介護保険内で行うならどうせ1割負担なのだから無駄な工夫などせず、製品を使えばよく、自腹でやるときにはなるべく安くなるように工夫してもらえという事らしいという対応だ。どうせ工事を行えば20万なんですぐ出るのだから、自己負担部分でそういうテクニックを使えばよいと思っているらしい。
小泉政権がもたらした格差社会はしっかり政策的に盛り込まれているらしく、20万以下で何とかしたい低所得者層には冷たいものとなっているようだ。