エネルギーの自給自足を考える

春から始めた空中菜園ですが、いよいよ秋冬野菜が間引き収穫の時期を迎えつつあります。
菜園をやっていて楽しみのひとつは間引き収穫です。
大根をつくるためには強い苗を残し、その他のを間引きますが、これらの苗もそれなりに大きな葉をつけていて、しかもやわらかい。
お汁の具に入れると最高に美味しく頂けます。
こうしてスーパーに並ぶような形になる前の間引き野菜を含めるとわずか2坪にも満たない菜園ですが、ほぼ家族三人の野菜に関しては自給自足を達成できたのです。
たまに友人が持ってきてくれる地植えの野菜に比べると我が家のそれはたいそう見劣りがしてしまうのも事実です。
多分、プランターのため保水量が足りないのかもしれません。
彼らの持ってきてくれる野菜は十分商品として耐える立派なものですが、我が家のはとても人に差し上げれれる代物ではないのです。
さて、ここに自給自足の意味があるのだと私は考えます。
自給自足とは「自らあてがい、自らを足らす」と書きます。
重要なのは自分の必要とする分だけを賄うということなのです。
今回はエネルギーの自給自足について考えてみたいと思うのですが、我が家はこの冬の暖房に備えてエネルギーを灯油からガスに切り替える工事を行いました。
世界情勢をみますと、景気の先行き減退感から原油先物が大幅下落しているようです。
しかしながら、それでも今年最初の金額に戻ったに過ぎず、これから需要期を迎える灯油の価格が以前のような50円とかに戻るとは考えにくいのが現実でしょう。
灯油価格はおおよそ70円でガス価格との分岐点となります。
灯油価格が70円を超えると、ガスのほうがエネルギーとして優位に立つわけです。
昨年も灯油値下がりの期待から見送っていたボイラーのガス化ですが、さすがにもう無理と判断しました。
ただ、どうせガスを導入するのならエネルギーの自給についても建築家としては考えてみたいと思います。
そこで家庭版発電システム「エコウィル」を採用することにしました。
我が家の温水パネルヒーターは一番寒い時期で1日10時間程度稼動していると思われます。
その間、ボイラーはお湯を作り続けますが、必要な湯温はせいぜい50度程度です。
一方その50度程度のお湯を沸かす為の炎は1500度にもなります。
1500度の熱の大半は利用されずに大気に放出されることになるのです。
これではあまりにもったいない話です。
そこで逆転の発想で、ガスでタービンを回して発電し、その廃熱を改修してお湯を沸かすシステム「コージェネレーション」が開発されました。
大規模建築では一般化しているこのシステムの家庭版が「エコウィル」なのです。
「エコウィル」が発電する能力は1kWhです。
つまり1時間に1kWの発電ということで、しかもお湯を沸かしているときだけの発電ですから、夏場はほとんど働いていません。
しかし、暖房期間となる5ヶ月間は給湯も含めると1日平均13kW、一ヶ月で390kW程度の電力を賄ってくれることでしょう。
そこで我が家が実際にどの程度電気を使用しているのか調べることにしました。
コンスタントに電気を使用しているのは冷蔵庫やその他の待機電力です。
これらは毎時0.5kW程度消費していました。その他に仕事のためにパソコンを稼動させても1kWhを前後しています。
もちろんエアコンやIHヒーターを利用したときは消費電力は跳ね上がりますが、平均すると一日15kW程度の電力消費ということがわかったのです。
すると1kWhという発電能力は案外妥当なところでしょう。
それ以上発電しても売電でもしない限りもてあますことになるのです。
人に売るほどではないですが、冬場の電力の自給自足は達成できそうです。
大きな電力を必要とするときは電力会社から足りない電気を購入すればよいだけです。
さて、では夏場のエネルギーの自給自足ですが、給湯でもっとも有効なのは太陽熱給湯でしょう。
太陽の熱をダイレクトにお湯に変換するエネルギー自給自足の優等生です。
給湯以外はやはり電気に頼らざるを得ません。
「エコウィル」はお湯をたくさん必要としない夏季には不利ですから、太陽光発電システムということになるでしょうか?
太陽光発電システムは3~4kWh程度の能力が一般的のようです。
しかし、先ほど述べたように、電気を自給するのならば1kWhで十分のはずです。
では何でそれを上回る能力をメーカーは推奨するのでしょうか?
キーワードは「ゼロエネルギー」です。
なんとも消費者受けしそうな言葉だと思いませんか?
このカラクリは、昼間は余分な電力を売電し、夜になったら買い戻そうということです。
単純な算数ですが、今後、太陽光発電が普及したら電力会社は高い電気代で本当に買い続けてくれるのでしょうか?
そこに深夜電力の戦略的なディスカウント価格に共通する危うさを感じずにはいられません。
現時点で1kWhのパネルのコストは70万円程度だそうです。
次世代型はもっと低価格化が進むことでしょう。
4kWhのパネルを上げた家庭のイニシャルコストは約280万円程度となります。
その家庭の電気料金が月2万円と計算しても減価償却するには12年かかります。
地域によっては冬場の発電が期待できず、20年近くかかるかもしれません。
本当の意味のゼロエネルギーは減価償却した後から始まるのですが、その頃、パネルが壊れずに100%能力を温存しているとは考えられないと思わないでしょうか?
一方、1kWhのパネルならば、厳しく見積もって、1/3だけ電気量を自給するとして7千円、約8年で減価償却となります。
実際は晴れていれば夏場の昼間はほぼ自給自足できるでしょう。
夜は夜更かししないで早寝早起きして空中菜園にいそしみましょう。
そうすることで買わなければいけない電気代は激減すると思います。
売電するほど過分な設備投資をさせるのはメーカー理論でしかありません。
メーカーにとっては数が売れたほうが儲かりますから。
売る戦略として顧客に訴求したのが「ゼロエネルギー」という甘い言葉なのです。
環境全体から考えたら過分な設備はそれだけCO2を排出することになり、エコのつもりがエゴに成りかねません。
ここは今一度冷静に自給自足という言葉を考えてみる必要があるのではないでしょうか?
我が家は来年、1kWhのソーラーパネルを乗っけようと計画しています。
冬のコジェネ、夏のソーラーは現時点でエネルギーの自給自足の手段としてもっとも相性が良いものと思えるのです。
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