「自給自足の家」始動!
今年もいよいよ冬の季節がやってきました。
我が家の空中菜園も雪が降る前にプランターを降ろさないといけません。
我が家の北面にある空中菜園は、夏と違い日照時間が激減してしまう為、野菜たちの成育が悪いようです。やはり障害物の無い母屋の屋根にこそ菜園は相応しいのでしょう。
暖房時間も少しずつ長くなっており、エコウィルによる発電量もそれに応じて増加しています。夏の頃は4,300kWhを示していた電力量も11月は2,800kWhと35%ほど削減し、その多くは自家発電により賄われたものと思われます。これから本格的な寒気が入り込み、暖房時間も長くなることで、半分くらいの電力は自給出来そうな感じです。
実験住宅でもある我が家の空中菜園と電力は1年を通し、一応の成果を見るに至ったようです。来年はもう少し菜園規模を拡大し、また太陽光を利用した発電および給湯システムなんかも採用して、一層の自給自足生活を模索してみたいと思います。
ところで自給自足などというと、世間から隔絶した生活のように捉える人が居ます。
たしかにそうした嗜好で人里離れた地に生活を営む人が居るのも確かです。
しかし、私が提唱し実践する「自給自足の家」構想はむしろ街に住むことで実現しているのです。
人が集約することで街が出来、さまざまな施設が作られます。
私は街に住むことで、図書館という膨大な蔵書を持ち、プールや体育館でスポーツを行い、時には巨大なスクリーンで映画も楽しみます。
これらを全て個人で賄おうとしたら幾らお金があっても足りませんが、ちょっと自転車で走る程度で全ての施設を我がもの顔で利用できるのが街に住む特権です。
それと同時に朝たった30分程度早起きするだけで3坪にも満たない空中庭園は間引き収穫を含め、かなりの期間我が家の食卓を彩ってくれました。
家庭菜園もどこかに土地を借りて行うのは大変です。移動時間やその移動に係るガソリン代、地代など随分経費もかかってしまうことでしょう。
それに比べて空中菜園は自宅の屋根などを利用しますから経費はほとんどかかりません。
必要なのは自分の労働力だけですが、自分の労働をお金に変換することなく直接物を手に入れることが出来るというのはちょっと世界観が変わってしまいました。
私たちは家を作るとき、土地に対する建ぺい率という制約を受けてしまいます。
建ぺい率というのは土地に対する建物の投影面積の比率を定めたものですが、一般的な住宅地では60%程度が上限となっていることでしょう。
私のように街のインフラを十分享受したいとなると郊外には行けませんので、広い土地を購入することが困難です。
ようやく60坪程度の土地を手に入れたとして、建物を建てられる面積はそのうちの36坪程度となり、駐車スペースや隣地からの離れを除くと猫の額ぐらいの庭がようやく出来ます。
しかし、せっかく作った南側の庭も裏の家がぎりぎりまで迫っている為に満足に陽の光が当たってくれません。
そこで街中で太陽の恩恵は得ることが出来ないと諦めてしまいますが、建物が建っている36坪はまさに太陽の光を受けている屋根になっています。
ただの屋根なら何も成らないここをすべて有効利用できたらなんと素晴らしいことでしょう。
36坪のうち4人家族分の菜園など5坪もあれば十分でしょう。余った空間では太陽の恵みを電気に変えたり、お湯を作ったり出来るかもしれません。
諦めかけていた太陽の恵みは案外近くにあったのです。
100%自給自足なんてハードルを上げる必要も無く、ちょっと発想の転換をするだけで案外自分たちの自給率を上げることが出来るものです。
自給自足で浮いたお金は僅かかもしれませんが、自給自足で得られる満足は大きなものです。
こんな話を1年間し続けていたら、興味を持ってくれるクライアントが現れてくれました。
いよいよ私の実験も実践に移ることになったのです。
設計に半年ぐらい費やし、先日、杢昌により着工となりました。
実践「自給自足の家」には私の家で行ったノウハウがすべて集約されており、それが初めから設計に組み込まれることで完成度が高くなっています。
この家のメイキングはおそらく杢昌文信紙面とホームページでお伝えすることが出来ると思いますのでご期待ください。
さて、私の自給自足談義は一段落し、毎年恒例の世界建築視察旅行の時期がやってきました。
今年はプラハから国際列車でウィーン、ブダペストを旅します。
次回の春号では始動した「自給自足の家」と旅の報告でも出来たらと思っています。