隣家からの視線...その後

先日相談を受けた隣家からの視線問題ですが、その後どうなりましたかと訊ねました。
隣で新築している業者の責任者がやってきて、「お宅の言うとおり、2階の窓にルーバーを立てて、1階に塀を作るには膨大なお金がかかるので、施主に言っても良いか。」と言われたそうです。
無論、お金のかかる話はしてもらわなければならないのですが、隣がクレーマーだということではなく、施工店の設計力の低さが今回の問題を引き起こしているわけですから、新築している施主にとってもクレームです。当然お金を負担すべきは隣の住人でも新築している施主でもなく、責任設計施工の業者ではないでしょうか?
それをあたかも隣人がクレームをつけてきたのでしょうがないといった他人事で処理をしようとする対応に同業者として気分が悪くなります。
私に相談してきた彼女は、その金額があまりに高かった(金額は不明)もので、これから隣人になる施主に申し訳なく思ってしまい、「なら良いです。」と返答してしまったそうです。
あくまでも民事的な話なので、クレームを取り下げた瞬間からもう再び請求することは難しくなるでしょう。
彼女の判断ですから、それに対して私がもう助言をすることは出来ません。
ただ、もしも今後、似たような事例をこれを読んだ人が体験するようなことがあるのならば、決して自分の権利を取り下げるようなことはしないで欲しいと思います。
後から家を建てた人が周辺環境に配慮することは当然の義務です。
また、それをきちんと助言するのも設計者、施工者の義務だと思います。
トラブルは短期間で処理した方が遺恨が残らないものです。
彼女はそうは言っても、きっと隣の人がなんらかの配慮をしてくれると思いますなどと、希望的な観測をしますが、工事担当者は決して今回のクレームを施主には語らないでしょう。
なぜならそれは施工側の落ち度であり、金額を施主に負担しろと言えば間違いなく今度は施主からのクレームになってしまいます。
おそらく最終金は引渡し後の支払いでしょうから、その前に変なクレームを発生させるようなことはしないでしょう。
彼女は隣人が越して来てから、いつ対応してくれるかなと心待ちにしますが、隣人はそんなことは考えもしていませんから、一向に何もしません。
彼女は結局、これから生涯、隣家から見られているというストレスを感じながら生活を続けるか、それに耐え切れず自分の家の窓のルーバーをつける羽目になるでしょう。
工事途中なら業者を相手にクレーム処理できますが、引渡し後は隣人との話し合い。
近所づきあいに暗雲立ち込めてしまいます。
末永く、円満に近所づきあいをしたいのなら、今回のクレームが発生した段階で処理すべきだったと思います。
「なら良いです。」と判断した彼女は、その安易な回答の意外な重さをこれから日々の生活の中で感じ続けるのでしょう。
単なるフリーの相談と助言ではなく、彼女が私のクライアントで業務として受けたのなら、きっちり処理できたのですが残念です。
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