「学校をつくることで未来をつくる」小嶋一浩

昨日は所属するJIA(日本建築家協会)新潟地域会主催の建築セミナーが行われました。
今回は新潟市と共催で学校建築を考えるということでした。
講師はこの秋から横浜国立大学大学院教授になられた小島一浩さん。設計集団 シーラカンス(現C+Aシーラカンスアンドアソシエイツ)創立者といったほうがわかりやすいでしょうか。

新潟市も今後、耐震問題や少子化による学校の再編に直面するにあたり、県内の設計者の意識を高めたいとの意向があるようです。

「学校をつくることで未来をつくる」

今回の演題です。
氏の代表的な学校建築のスライドを見ながら解説を聞きましたが、一貫して言えるのは建築は箱づくりではなく地域と学校の連携をつくるソフトづくりに寄り添うことであるということ。
そして子供が元気な学校でなければ意味がないということでした。

小嶋さんの話に必ず出てくるのが「黒と白」の建築。
別に色彩の話ではなく、機能性とフレキシブルを単純に色分けして考えてみようという発想の話です。
20世紀は大きなベクトルの時代でした。
しかし21世紀は小さなベクトルの集合体がひとつのコミュニティを形成する多様化の時代です。
学校建築においても決まった箱に押し込めてところてんの様に子供達を押し出すのではなく、うまく興味を引き出す仕組み、その場の提供が重要。
これまで何回か教育関係の講演を聴いてきましたが、まさにそれを建築的にどう表現するかという内容です。

建築をデザインするということはさまざまなシュミレーションが必要です。
学校の廊下は何人が一度に移動できるかということで幅の指針があったりしますが、実はそんな風に整列して移動することなどほとんどありません。
それよりももっと自由に動き回り、それが集まった所が教室となる。
いわゆるオープンスペース型の教室の在り方ですが、そのデザインを決めるには風と音のスタディが欠かせない。
そして風をデザインすると結果的に空間の開かれたオープンでワンルーム的な学校建築になっていきます。

ちょうど前日、夏樹の通う小学校のPTAの会合があり、資料として小学生無差別殺人事件のあった附属池田小学校のセキュリティの話があったばかり。
現実には学校は閉じる方向に向かっており、今回スライドで紹介された学校群はそうとうのPTAとの意識の共有がなされないと実現できないでしょう。
それだけに実現できていることにとても感銘を受けますし、ちいきで学校を守るという社会がうらやましく思えます。
この学校に学ばせたいと市外から転入してくる若い家族が後を立たず、いまさらクローズな学校建築を行政も出来ないとのことでした。

やはりソフトづくりをどうするかが先行で、どこぞの街のように箱ありきでは上手く行かないということでしょう。

さて、建築的にも大変素晴らしい開放的な空間ですが、今回のような放射能事故はさすがに想定されていない。
原子力災害はこうした設計思想をも根底から壊してしまう。
さすがにその辺を突っ込んだ意見は出ませんでしたが...

昨日は200名を越える動員で特に建築系の学生が多かった。
さすがに人気の高さですね。
10月にも建築セミナーを開催いたしますので、こちらもご期待下さい。
詳しくはJIA新潟地域会HPでお知らせいたします。

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