一本釣りと延縄漁

漁業資源の問題で延縄漁が問題になっているらしいですね。
まだ未成熟な魚まで根こそぎ取っちゃうものだから、成魚が育たない。
結果として漁獲量が減っているとのこと。
一本釣りなら未成魚が掛かってもリリースできるので、資源の保全も出来るのだそうです。

さて、昨日は昼から事務機屋さんが営業にやってきました。
CAD(設計支援ツール)の売り込みです。
平面図を入れるだけで、立面、矩形(断面詳細)、構造図、各種設備図、パースの果てまで作ってくれるのだそうです。
営業ツールとしても有効で夢のようなソフトなんだとか?
でも、平面図書くだけで何でそこまでの事が出来るかというと、建物で使用する部材、設備があらかじめ3Dデータとして収められているから。
そうした3Dデータは一般的なものが入っているだけで、当事務所のように部材や設備もオリジナルで作っちゃうという設計だと対応できません。
対応させようと思ったら、そのための3Dデータを新たに作らなければならないのですが、一軒ごとにデザインするので、次には使えない。それでは全然効率が悪いですよね。

結局うちみたいなアトリエ系事務所は一本一本昔ながらに線を引いたほうが、設計者自身の頭にも入りちょうど良いみたいです。
造形の検証もシンプルな3Dソフトで日影までしっかり行えますしね。

どういうところがこういうソフトを買ってくれるの?と聞いたところ、やはり準メーカーや工務店がほとんどとのこと。
お客を捉まえたら即営業に走らなければ成らない。
そのためにはたたき台の平面図だけでは弱く、外観パースなどイメージ戦略が重要なんだとか。
結局のところ、設計支援というよりは営業支援ということですか。

お客のライフスタイルや考え方を知るのに私は何ヶ月もかかってしまいます。
図面を描けるのはその後の話。
家族構成と敷地情報だけでどうして設計が出来てしまうのか?
私にはさっぱり理解できません。
施主と一緒に考えながら作り上げていくというのが設計だと思っていますが、どうやらそればかりではないらしい。

なんだか話をしているうちに、一本釣りと延縄漁の話を連想してしまいました。
うちの事務所はまさに一本釣り漁法。
家作りに関して成熟した考えを持つ施主を相手にしています。
しかし、最近のCMなどを拝見するにまさに延縄漁。
「どういう住まい方」というより低価格、アパート並みというキーワードで囲い込み。
まだアパートで貯蓄に励みながら、ライフスタイルの確立をしたほうが良いと思える人たちを一気に取り込みます。
結果として成熟した施主は減少。
ちまたには資産価値の少なそうなアパートの戸建てみたいな家が建つ。
そうして出来た街並みの寿命は短く、相変わらず20年で建替えの繰り返しとなるのかなぁ?

家内制手工業的事務所の愚痴です。

カテゴリー: 建築 パーマリンク

コメントを残す