お買い得?

デフレの波は住宅産業にも押し寄せていて、嘘みたいな価格の住宅がどんどんリリースされています。
ちらしなんかみるとカーポート付きなんて当たり前でセカンドカーまで付いていたり、すごいですね。
これって家を買おうという人にはチャンス到来って感じも一見しますが、安くても土地からあわせたらやはり最低でも1千万オーバー。
人生でもっとも高額な買い物である事には変わりありません。
それでも1千万は安いって感じる人はかなり金銭感覚が麻痺している証拠。
とかく高額な買い物をするとき、特に家を建てるときは100万、200万が大したことに思えなくなりがちです。
日常の金銭感覚を忘れないようにして頂きたいところです。
 
先日、妻を長岡のクリニックに送っていくときの話。
どうして安い家が造れるの?
まずは企業努力だろうけど、今の金額はちょっと尋常じゃないね。
なんて話になりました。
私の事務所でもなけなしのお金で家を建てる人がほとんどですが、私はローコスト住宅はお勧めしない。
造るならハイコストパフォーマンス住宅(ハイコストではありません、あくまでもコストパフォーマンスの高い家)をお勧めしています。
どんな家を造っても多分現金の人は居ないでしょうし、車並みに5年で支払う計画の人も少数でしょう。
25年から30年ローンが一般的と思えますが、それがつまり税制上の償却期間というわけです。
きちんと造られた家は当然その何倍も現実の償却期間は長いものですが、残念ながら日本の現状は25年程度で建替えられているのがほとんどです。
いままでの一般的な建築でもこの程度で償却されてしまうというのは世界的に見ても異常に短い。
ところで安い家というのはもちろん企業努力もあるでしょうが、やはり限界はあります。
極端に安い家はどうしても粗悪な材料を使わざるを得ないのは想像に難くないでしょう。
一般的に賃貸の木造アパートの償却期間は20年とされていますが、築20年のアパートでは収益がほとんど期待できません。
10年ぐらいで大幅なリフォームでお化粧をしなおさないととても住み手は見つからない。
アパートの場合、賃料にそうしたリフォーム代を含んでいる、所詮は短期消費財。
貸主が利益を生む為の建物ですから建築コストもそれで採算が取れるであろう程度の材料で、長持ちしなくても「見てくれ」の良いものであれば使われてしまいます。
さて最近広告に入る激安住宅ですが、私はそうした工務店やメーカーの人間ではありませんので実情は判りませんが、なんとなく眺めるに、どうもアパートを戸建にしたイメージが大きい。
つまり償却期間10年程度の材料。
これを25年から30年でローンを返そうというわけですから、途中で建築としての破綻が心配です。
バブルの頃は日本の経済感覚もデタラメでしたが、それでも家にお金をかけられたのでやはり良いものが建っています。
日本の建築への一般の人の関心が最も高まった時期でもありました。
主要先進国で住宅に温熱環境が整っていないのは日本だけでしたが、この頃からようやく省エネで快適な環境づくりが建築業界のスローガンに掲げられました。
ところが昨今のデフレ現象。
またしても日本人の住宅(生活)文化が20年ぐらい後退したような「見てくれ」だけの暖房機器はお客様持込の家の乱立。
設計者としては残念でなりません。
住宅は車のような短期消費財ではありません。
どの国でももっとも高価なものであり、それだからこそ長く持たせなければ結局はクライアント自身が経済的に厳しい状況に置かれてしまうのです。
百年持つ(持つの言うのはメンテナンスをしての話です)住宅に3世代が住み、1代目は家、2代目は家のメンテナンスとクルーザーにお金を使う欧米人と安いけど1代で2軒も作り一生住宅ローン、2代目も3代目もそれを繰り返しいつまでも住宅ローンに縛られる日本人、どっちがお得なお金の使い方なのかを、こんな時代だから考える価値はあると思うのです。
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