本日、週末に行った住宅改修の現場を確認して愕然としてしまいました。
床上げによる段差解消に伴い、スロープを延長してもらったのですが、その勾配がもともと付いていたスロープと違っている!
私たちが福祉住環境整備に関わるとき、注意しなければならないポイントというのがいくつもありますが、その一つに「規則の整合」というのがあります。
私たちが普段意識しないで上り下りしている階段は段差が同じだから自然に上れるのであり、もし階段の段差がまちまちだったら怖くて上り下りできないでしょう。
これが「規則の整合」という考え方。
私たちは知らず知らずのうちに規則の整合を予測して行動しています。
階段はどの段の高さも同じであり、スロープの勾配も同じ。途中で変わるなんて予測はおそらくたてない。
和室の敷居の段差も床は平らであるという無意識の予測に対し、規則が不整合になっているからに躓いて転倒するのです。
少なくとも住環境整備において新たに整備したところに規則の不整合なんてあってはいけない。
これはもう福祉住環境整備に携わるものの常識と考えていましたが、案外そうでもなかったということです。
もっともなんでこんな事態になったのかと考えると私にも多くの落ち度がありました。
そもそも今回の住宅改修についてですが、担当のケアマネージャーから退院までに家を直さないといけないからと連絡が入りスタートしています。
住宅改修の原則の一つに、実際に利用者も同席してもらい、その人の動作検証を行うというのがあります。
ところが往々にして同席してもらえない。また病院から早期の退院を迫られているというのがほとんどのパターン。
ケアマネージャーからの情報を頼りに住環境整備の提案をするわけですが、住環境整備の考え方は移動形態により大きく変わります。
当初与えられていた情報では自立歩行は出来ず、介助による車椅子が前提でした。
また、以前にも介護保険を利用した改修を行っており、今回は全て自己資金となる為なるべくお金をかけたくないという要望もありました。
そこで、介助用の車椅子を前提に、廊下の床のかさ上げによる段差解消を行わず、現状の廊下から土間部分へ車椅子用のスロープを設置することに。
ところが実際に退院してきた利用者は具合の良いときには杖による歩行が可能で、午前中は歩き回る。
そうなってくると廊下周りの方々の段差がリスクとなってきてしまいます。
実際、退院してきたらすぐに転倒しかけたということで、ケアマネージャーを通さず直接私のところに連絡が入りました。
ケアマネージャーには事後報告となりましたが、ご主人と打ち合わせにより結局床上げをすることに決定。
ところが床上げ部分は50ミリ、スロープとの段差を解消しなければなりません。
1/12ですから、スロープをそのまま延長すると600ミリ伸びてしまう事になります。
廊下に600ミリ食い込むとさすがに厳しいということで、施工業者は良かれと思い急勾配のスロープで現状のスロープに繋げてしまったというのが事の次第です。
今回の問題を分析するに、まずは的確な情報を得ることが出来なかった。
入院していた病院は遠く、ケアマネージャーは一回病院に電話をしただけということでした。
また、家族も遠いがゆえに家業もあってあまり見舞いにも行っていませんでした。
そういう状況ならば、大きな音をさせる工事でもありませんでしたので、とりあえず退院してもらい、状況を確認してから計画を立てるという提案を私はするべきでした。
また、業者さんもいつもお願いしている方でしたので、ある程度意識の共有は出来ているものと油断していました。
なにか問題があるようなら電話が来るであろうという甘えです。
実際のところ「規則の整合」に関しての知識の共有は出来ていませんでした。
業者さんも良かれと思ってやった後に私から文句を言われさぞ気分を害された事でしょう。
これは十分私が反省をしなければならない。
どんなに回数を重ねても、やってくれるだろうというのは甘えです。
初心を忘れず、きちんとポイントを確認しなければならない。
今回の場合、そのままスロープを延長すれば確かに600ミリ必要ですが、もともとスロープは土間に置いただけのもの。
スロープ自体を30ミリも上げてやれば今回彼らがやった急勾配部分で処理できました。
後の残りは土間部分で調整も出来たでしょう。
処理の仕方はいくつかの方法はあったでしょうが、出来たら業者さんと一緒に悩みたかったと思います。
一本電話くれればと期待するより、どんな具合だろうと一本電話をかけるべきだったと悔やまれます。
仕事を任せてくれた家族には迷惑をかけられません。
きちんと対処はしたいと思います。
何回こういう作業を行っても、日々失敗と反省の繰り返し。
こうした失敗を一人で反省しているよりも、共有できた方が次に生かせる。
それが私の福祉住環境系ボランティア組織を設立したときの発想です。
実践こそが一番の勉強です。
会員の皆さんに私の失敗を伝える義務が私にはあります。