夢先案内人

三条市のUD(ユニバーサルデザイン)施設利用懇話会に有識者として参加している。
先日は市町村合併により空き空間が出来た栄庁舎を活用した子育て支援拠点整備計画に関する会議が行われた。
子育て支援は重要案件である。
私たちの会議に先立ち、他の市民参画による委員会による整備案が作成された。
私たちの会議はその整備案に対し、UD的視点から意見を述べるのが仕事である。
ところが、毎回そうなのだが、UD的視点以前の問題が多すぎる。
高齢者・障害者というと生活するということを軽視した病院のようなプランしか提示できない設計事務所。
市民サービスをハード面でしか捉えることが出来ず、抜本的な改革を行わない役所。
多目的といいながら誰の利用を想定しているのかさっぱり見えてこない公共トイレといった具合だ。
どうせならそういった方向性が定まる前の段階から意見を言わせて欲しいものだ。
毎回、人がせっかく作ったプランにケチをつけているだけでツマラナイ。
 
さて、先日提示されたプランだが、中庭を見ながら食事ができるコーナー、子供たちが走り回れる広場、絵本のトンネルといった具合に子育て世代の親の気持ちが詰まったものになっていた。そういった想いは尊重してあげたい。しかし、それらのゾーニングが施設形状を無視している。
本件は既存施設の再利用であり、市役所支庁機能、子育て支援施設機能、図書館機能を併せ持つ複合施設である。
利用時間帯も管理形態も違うので、明確な区画整理を必要とするのだが、そういった概念が残念ながら無い。
そのため利用者動線も交錯し落ち着かないし、通路にスペースの多くを取られてしまうので施設の有効利用が出来ていない。
せっかく施設に子供たちへの想いを練りこむのなら上手にコーディネートする専門家にも私たちの前の会議に参加して欲しかった。
いきなり自分たちの希望を盛り込んだら住宅だってまとまらないだろう。
まずは敷地形状や付近の状態など条件の抽出を行い、おおまかなゾーニングを行う。
設計を行うものなら当たり前の所作である。
素人はそうした所作はわからないだろうから、設計者は上手に導くのが仕事である。
今回の会議も夢だけを語り合って、それらをコーディネートする夢先案内人が不在だったようである。
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