取り逸れの無い銀行に美味しい住宅ローン

住宅をキャッシュで作った人は私の建築人生の中でもまだ一人しか居ません。
住宅を作るのにローンを組むというのはもう当たり前の事なのでしょうか。
しかし、個人が数千万のローンを30年といういわゆる労働年齢を全て賭けて払っていく訳ですから大変な話です。

実際私も35歳で家を建て、何も疑問に思わずローンを組みましたが、50を過ぎた今でも残債はあり、人生最大の失敗だったと悔やむばかりです。
今日までに利息として1500万円以上支払い、15年の間に地価は半減、500万円が消えました。
何もならないお金を2000万円も支払い続けたのですから、開いた口が塞がりません。
年金も期待できない現代、せめてこれが預金として残っていたら老後の蓄えとして随分楽だったろうに。

亡き父が家を建てた時は個人の借金というのは今と違ってとてもハードルが高かったそうです。
ですから、当初引っ越したばかりの家は小さな平屋でした。
恐らく少ない給料から蓄えたお金で建てたのだと思います。
増築、リフォームを繰り返し現在に至っていますが、お蔭様で借金とは無縁でした。

しかし、その実家も一度差し押さえられようとしたことがあります。
それは当時、父が役員を務めていた会社の保証人になってしまっていたからです。
オイルショックによりその会社が行き詰まりました。
お蔭様で、両親の努力で家は手放さず、当時高校生だった私は無事学校も卒業させてもらえましたが、父の苦労は大変なものだったと思います。

日本のローンは独特です。
欧米では借主の責任を担保物件に限定する「ノンリコースローン(非遡及型融資)」が一般的で、個人にまで追求することはありません。
会社の借り入れを個人が担保するなんてことは無いのです。
ところが日本では担保物件以外の財産にまで借金の取り立てが及ぶ「リコースローン(遡及型融資)」 。担保になっている物件の資産価値が残債より下回ったときは、その残債の取立てを個人に起こします。財産を失って残債が残るという訳です。

これは今回の東日本大震災でも大いに問題になりました。
アメリカのサブプライムローンはそのローンの性質の違いから、家を失っても人生まで棒に振る必要は無く、家を手放すことで借金はチャラになり、再出発は実は容易だったのです。

さて、日本の住宅ローンに話を戻しますが、こちらは人生を担保にかけた決死のローン契約です。
私の頃の金利は今と違って高く5%台でしたから、そのまま払い続けると借り入れ金額と同額の金利を支払うことになります(もちろん、借り換えしましたが)。
現在の金利はそれから比べると随分安くなりましたが、それでも総支払額の1/3は金利です。

人生を担保にさせ総支払額の1/3~の利息を手にする、しかもその貸出資金の調達はほとんど無金利で調達できる銀行って凄いですよね。
住宅に住む為には人生を担保に住宅ローンの契約が当たり前。
まだこれから住宅をお考えの人は是非一度冷静に考えてみてください。
なんとなく上手く社会の歯車に組み込まれていませんか?

住宅はローン、子供の教育費はローン、車はローン、衣服の果てまでローンでは生涯 銀行のための働き蜂 ですよ。
「得するローンの借り方」とかの指南本読んでいてはダメ。
銀行から借金して良いのは収益の見込める事業資金だけ。
欲望の先取りをローンでしてはいけません。

住宅をキャッシュで建てるなんて出来ない?
出来ますよ。
父の時代よりもはるかに合理的にね。

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