「はこ」と「もの」

昨日、若い子達と雑談をしていたときのこと。
「僕も家を建てるときはぜひコチラでお願いします!」
なんておべんちゃらを言ってくれる。
そりゃ、悪い気はしませんが、いつのことやらと適当に流して聞いていました。

話がおうちシアターに至り、
「僕もこんなのが家に欲しいです!!」
と言われたときに、今まで引っかかっていた事が一気に噴出した。

君たちが欲しいのは家という名前の「はこ」とプロジェクターという「もの」 だよね。
アパート住まいの彼らにとって、住まいは寝るための「はこ」であり、その中で自分の欲求を満たしてくれる「もの」に囲まれていたいというのは ごく当然のことだったのでしょう。

最近一般的になった「家を買う」という言葉がまさにこれですが、「家を造る」ために設計という仕事を選んだ私には住みにくい世の中になってしまいました。

設計という行為は単に箱のデザインをするということではなく、デザインを通してそこに住む人の生活を支援する行為だと私は思っています。
流行の形の「はこ」に、流行の「もの」を組み込むだけの人たちとは一線を画している訳ですが、明らかにこちらのほうがマイノリティなのでしょう。

私が提案する「おうちシアター」というのは単なる設備ではなく、住み手に情報の取捨をさせるための仕掛けなんです。
最近流行の大型液晶TVはリモコンのスイッチを入れるとフルハイビジョンの美しい画像を 私たちに提供してくれます。
しかし、あまりに安直過ぎて、だらだらと観てしまいがち。
その点、プロジェクターはスクリーンをおろす所から始まり、幾つもの所作を行ってやっと鑑賞できますが、それだけに観る側にもその構えがしっかりできます。
面倒くさい分、見たいものをしっかり見ることが出来るのです。
情報過多の現代に必要な能力は情報を取捨するということ。
設計者としてはそこを狙っているわけです。

プロジェクターが欲しければ買えば良いだけ。
別に私のような設計者は必要ないでしょ。
ただ、何でこの家には据え置きのTVが無くて、電動スクリーンをおろしてプロジェクターなのか?
そこら辺を理解できる大人になってね。

そんときゃ、ぜひ設計をご依頼下さい。
いつまでもお待ち申し上げます。



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