あやふやな空間

昨日、教え子が図面を持って遊びに来た。
施主に提出するプランを見て欲しいというのだ。
施主の話を聴きながら作ったと言うその図面にはあやふやな空間が多かった。
設計に不安があるととりあえず無駄に広く空間をとったり、意味もない空間を作りがちだ。
そのくせリビングとかダイニングと命名された空間には動線が交錯し、単なる広い廊下にしかなっていない。
広ければ何とでもなると言うのは案外落とし穴だ。
中途半端に広い空間は何も使えず、結局物置になってしまうことが多い。
クライアントにもよるのだが、空間をうまく使えない人に無駄な空間を与え1年くらいしてお邪魔すると、段ボール箱が山積みになっていたりして悲しい。
ちょっとしたオブジェや花でも飾ってくれたら生きるのに、段ボール箱のおかげで部屋全体が殺伐とした感じになってしまっている。
もちろん引き渡した後の利用方法はクライアントの自由であり、それを非難することは出来ない。
しかし、そうならないように上手く空間構成をするのが設計の技でもある。
もし通路としての用途の空間ならあえて物が置けない広さにしたほうが、空間は確保できる。
広く作り、物が置けるかなと思わせてしまうと、物を置いた瞬間に狭い勝手の悪い通路となってしまう。
通路は災害時の避難経路でもある。
物が山積し、崩れていることで避難が遅れ、被災することだってあるのだ。
家の収納計画に関しても、適材適所、必要な場所に細かく分散することが重要だ。
必要以上に収納を設けたがるクライアントを説得するのは大変だが、無駄な収納は一度押し込んだら二度と出てこない荷物の墓場となりかねない。
出窓もクライアントによっては勧めない。
出窓は住み手が外部にその知的な住まいかたをアピールするショーウィンドでもある。
そこが物置になっていては、それを外から見るのも辛い。
住んでいる人は窓にカーテンをつけ、内部からそのみにくい姿を覆い隠しているから平気だ。
そんな風になりそうなときはあえて出窓は作らないようにする。
 
設計をする際、いかにそのプランでの生活をシュミレーションできるかが重要である。
単に空間が出来ているだけでは駄目なのだ。
設計すると言うことは、バーチャルに家を建て生活する姿を想像できてはじめて完結するのである。
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あやふやな空間 への1件のフィードバック

  1. 大介 のコメント:

    ごもっとも!!

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