エクセルギーとエントロピー

2月1日、仙台で行われたセミナーに参加してきた。
演題は「エクセルギーとエントロピー」、講師は武蔵工業大学の宿谷教授だ。 
なかなか日常生活では聞こえてこない言葉だが、いわゆるエネルギーの概念を示す言葉と思ってもらえれば良いと思う。
建築を考えるとき、エネルギーの概念は重要なことである。
ちょっと前まで人類は火というエネルギーで暖を採ってきた。
囲炉裏や暖炉で燃える薪は1500度にも達するが、周囲の温度はせいぜい22度くらいにしか上がらない。1500度のエネルギーはどうなってしまうのだろう。エネルギー保存の法則は学校で習ったことがあると思う。エネルギーというのは形を変えることはあるが、その量は変わらない。
1500度の熱は周囲の膨大な空気を暖めるが、その量が多すぎるために拡散し、ようやく22度まで暖めたということだ。周囲の空気を寄せ集めたエネルギー量は薪の燃えて放出した熱エネルギーと等しくなるはずだ。
こういった直接燃える火のような熱エネルギーしか無かった人類は自然環境を利用したさまざまな工夫で薪の熱エネルギーだけで暖をとった。
いっぽう現代ではさまざまなエネルギーを電気というエネルギーに形を変えることで発展する。
エアーコンディショナー(いわゆるエアコン)の発明は室内の空気を暖めたり冷やしたりして快適な環境を作り出そうとした。これだけで温熱環境が制御できるのだから普及の速度は速く、人類はこれに頼り切ることになった。
その結果、建物は単に外気と内部を遮断することだけを考えればよくなり、周りを取り巻く自然環境は無視しても暖をとることが出来るまでになる。
しかし電気も火力発電では炎という1500度の熱エネルギーでたったの240度の蒸気をつくり、蒸気タービンを回転させてようやく作る。またそうして作られた電気も送電によるロスにより、最初のエネルギーは30%を超えない程度にまで減退するのだという。その電気をまた熱エネルギーに変えるのだから、薪で暖を採っていた時代に比べたら、同じ程度の暖をとるために何十倍(もしかしたら桁がちがうかもしれない)ものエネルギーを消費しなければならないのが現代である訳だ。
 
さて、エネルギー保存の法則を再度思い出してみる。
消費したエネルギーは形を変えて自然界に温存する。
私たちの快適な環境を作り出してくれる熱エネルギー(利用可能なエネルギー)をエクセルギーといい、その結果拡散して冷えてしまうが量が多い熱エネルギー(利用不可能なエネルギー)をエントロピーと定義する。
祖先たちと比べて、私たちの消費するエクセルギーは膨大で、その結果作り出されるエントロピーもまたそれ以上に膨大なものになる。
このエントロピーのひとつが地球温暖化という事象である。
私たちが通常使う省エネということばは実は「省エクセルギー」と言わなければ正確には伝えることが出来ない。
普段、なにげなくエネルギーという言葉を口にするが、一歩すすめて「エクセルギーとエントロピー」という熱概念を持つことで、実はエネルギーの循環というものが見えてくるのだ。
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