君子行で読み取らなければならないこと

前につぶやいた「君子行
瓜田に履を納れず李下に冠を正さず
の一節が何を言っているか判らないという質問が多いので一応答えです。
紀元前356年、斉の国では威王が即位する。
が、この威王、即位したのに国政を大臣に任せきりで一切自分はタッチしようとしない。
そんな中、王が国政にかかわらないのをいいことに、『周破胡』という大臣が好き勝手に国を動かしていた。彼は取り巻きに囲まれて私腹を肥やし、清廉潔白な人々を嫌ってかたっぱしから排除した。
これを見かねた威王の寵姫『虞氏』は、「どうぞ『周破胡』を除いて、賢者として名高い北郭先生を起用されますように」と進言した。
ところがこれを知った『周破胡』、逆に「『虞氏』は後宮に入る前、北郭先生と関係があったのだ」と讒言したのである。
彼の讒言を信じた王は彼女を幽閉し、係官に訊問させたが、この係官も『周破胡』の息がかかった人物で、彼女の供述をことごとく捻じ曲げて王に報告した。
さすがの王もなんかへんだぞと不審に思い始め、彼女を召しだしてじきじきに問いただしてみた。
すると、『虞氏』は
「磨けば玉となる名石は、たとえ泥にまみれて汚れたといえども卑しめられず、また柳下恵というお方は、冬の夜に凍えた女を寝床にいれてその体を温めてやったからといって、男女の道を乱したと他人に非難されることはこれっぽっちもなかったと聞き及んでおります。これは日頃から行いを慎んでいたればこそ、人に疑われずにすんだのでございます。
わたくしに罪があるとすれば、瓜田に経るには履を踏み入れず、梨園を過ぐるには冠を正さず、という戒めを守らなかったことがその一、
幽閉されている間、誰一人わたくしの真実の声に耳を傾けて下さらなかったということでわかったように、私が日ごろから人々の信頼を得ていなかったということがその二、でございます。」
と、まず自己の不明を王に詫びたのである。
そして、『周破胡』が国政をもっぱらすることの危険性を切々と王に訴えた。即位してすでに9年、威王は親政に乗り出すべき時のきたことを悟り、彼女の幽閉を解く一方で、『周破胡』を煮殺し、国政を刷新したのである。
以降、奸臣を一掃して賢臣を起用、一挙に国政を盛り返した名君として後世に名が残ることとなった。

みんな「冠を正さず」の部分だけを取って戒めとするんだけど、本当は君子たるもの信ずるべき部下(この場合寵姫)を見定めなさいってことなんです。
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