森の生活

岩波書店から発行されている上下巻の文庫だ。
事あるごとに紹介している私の人生のバイブルとも言える本である。
「森の生活」というタイトルから自然志向、田舎志向と思われるかもしれないが、決してそればかりではない。
むしろ上巻の半分を占める第1章が「経済」となっているのからも判るとおり、経済学的な観点からシビアに当時の社会を風刺している。
内容は現代にも通じるものが多い。
むしろ今だからこそ読み返すに値するのではないだろうか?
著者のH.D.ソローはウォールデン湖畔の森の中に自らの手で小屋を立て、自給自足の生活を営む。
それは決して社会からの逃避ではない。
自然の中の暮らしだって想いやイメージだけではたちまち立ち行かなくなってしまう。
どこに住もうと現実からの逃避は出来ないのだ。
ただ、現代社会は便利さのための多くの不便、豊かさという偶像のための無駄な消費に明け暮れている。
大量消費を支えようと思うから輸入に頼り、農薬に頼り、輸送コストも掛けなければならない。
自分の消費だけならそんな無駄を省けるではないか?
「地産地消」がようやく叫ばれている昨今だが、200年も前からソローが世に説いていたことだ。
 
人がお金を発明した時から、人類は経済を無視した活動は出来ない。
なのにいまだに経済を別枠で考える人が多いのが不思議である。
世の中の多くの事象は経済から読み取ることが出来るのだ。
たとえ「福祉」といった分野でもだ。
国会で議論されている医療改革だって全ては経済の話だ。
言っていることが判らない人は一度読んでみては如何だろう?
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